「つや姫」誕生に見る危機管理
2010年のコメの作柄が6年ぶりの不良だった。今夏の高温による障害でとれたコメのほとんどが2等米となって買いたたかれた農家も多かったと聞く。全体的な作柄は「平年並み」と伝え聞くが、農家にとって厳しい夏であったことは間違いない。「北冷西暑」の予想は、あながち外れてはいなかったようだ。
ところが、この危機的な状況下で「希望の星」とも言える新品種のコメが話題を呼んでいる。「つや姫」だ。危機管理とは、「最悪を想定してそれに備えること」によって成し遂げられる。場当たり的で対症療法のような施策では、危機を乗り越えることはできない。新品種「つや姫」は、いまだ巷では地球温暖化懐疑論が散見される中で「地球温暖化による高温障害」と闘える新品種として企画開発されてきた経緯がある。過去に「農林1号」という新品種の改良で日本のおいしいコメのとれる北限が上がったことがあった。この長年にわたる地道で根気のいる作業は道徳の教科書にも掲載された。また、栽培するのが難しい「コシヒカリ」を商品化するためのこれまた気の遠くなるような努力の話も有名だ。