「つや姫」雪国の利点を生かし、雪室貯蔵のコメに注目…山形
2年連続の豪雪に見舞われている山形県内だが、雪国ならではの利点を生かし、雪室で貯蔵されたコメに注目が集まっている。県は今年度、「雪室高鮮度米推進協議会」を設立。環境に優しくおいしいコメとして、県産米にさらなる付加価値をつけようとPRを始めた。今春以降は、雪室で保存した「つや姫」の販売も計画されている。
2月11日。村山市のJAみちのく村山では、荷台に雪を積んだトラックが、雪室の貯雪庫を何度も往復していた。高さ8メートルの貯雪庫内では、職員が機械で雪の壁を作り上げた。2月末まで続く“雪入れ”作業が終わると、貯雪庫は秋まで閉鎖される。
同JAでは、2003年度から本州で最大級となる雪室の運用を開始。雪室は、1500トン以上の雪が入る貯雪庫と、コメを置く三つの貯蔵室に分かれ、貯雪庫の空気を施設全体に循環させる仕組みだ。
室温5度、湿度は75%と保存に最適な上、通年の電気代は従来の半分以下に抑えられる。県農業総合研究センター(山形市)の調査では、雪室に長期間保存した場合、「コメの酸化がほとんど進まず、鮮度が保てる」との結果が出ている。
現在は、県産米「はえぬき」を中心に約5万俵を取り扱い、県内や愛知県周辺のスーパーに出荷しているが、価格は、県外で「はえぬき」の知名度が低く、「雪室での保存」を強調して販売してこなかったこともあり、通常の倉庫で保管されたコメと変わらない。
このため、同JAでは今春以降、県外でも注目が集まる「つや姫」を雪室で保存。「雪むろ米」として販売することを計画している。現在、パッケージを考案中で、同JAの犬飼庸智生産販売課長は、「“環境への優しさ”を全面に出して、都市部で『雪むろ米』を広めたい」と意気込む。
県内ではほかにも、JA新庄市や飯豊町の卸売会社などで、雪室に貯蔵されたコメを扱っている。そこで、県全体に雪室の活用を広げようと、県は「雪室高鮮度米推進協議会」を設立。雪室を持つ約15団体が集まりアイデアを出し合っている。
昨年8月には、東京.銀座の県アンテナショップ「おいしい山形プラザ」で、268人を対象に食べ比べの店頭アンケートを実施。雪室のコメが「おいしい」と答えた人は、66.5%に上った。さらに、雪室へのイメージを尋ねたところ、37.0%が「環境に優しい」、27.8%が「みずみずしい」などと答えた。
今月14~15日に大阪で行われた企業向けの展示会でも、全国の小売業者らから注目が集まった。
同協議会は新年度、さらに具体的な戦略を検討する予定。県県産米ブランド推進課の武田一夫課長は、「『つや姫』は今後、多様な付加価値をつけて販売する必要があるが、雪室はその一つとして期待できる。ただ、雪室の建設に費用がかかるのが課題だ」としている。
2012年2月22日 読売新聞